女性が作る女性のための純米吟醸酒- ARUSHIROI -

宇都宮酒造 今井 亜紀 × momo farm 西岡 智子 × クリエイター RARI YOSHIO

福田屋の日本酒コーナーで、一際目立つ日本酒があります。
漢字で綴られたネーミングの日本酒の中で、真っ白なパッケージに可憐に書かれたお花のイラスト。その日本酒の名前はARUSHIROI
これは、唯一無二のものづくりに励む女性3人が、女性のために作った最高の日本酒。いくつもの賞を受賞したARUSHIROIについて、3人にお話しを伺ってきました。

純米吟醸
ARUSHIROI

うま味のある程好い酸味が口の中を駆け巡る。女性が手掛けた女性のための純米吟醸酒です。

《受賞歴》
・2021 グルメ&ダイニングスタイルショー(日本) 準大賞
・2022 InternatinalWineChallenge(イギリス) 銀賞
・Kura Master(フランス) プラチナ賞
・MilanoSakeChallenge(イタリア) 金賞 / デザイン賞 / フードペアリング賞

熟成の間の時間

- 順を追って開発の話など伺えればと思います。3人の出会いはどんな感じだったんですか? -

今井: きっかけは、酒販店さんの紹介で女性米農家の西岡さんに出会いました。そのときに、西岡さんから酒米を作ってみたいというお話しをいただいたんです。その後、西岡さんがRARIさんを誘ってくれました。

RARI: 2015年あたりから西岡さんとはお知り合いで。当時から西岡さんは農業女子として活動してたのよね〜。

西岡:そんなに前でしたっけ〜?

今井:それで、実際のプロジェクトがスタートしたのは今から4~5年前くらいかなぁ。

西岡:ARUSHIROIに使っている五百万石は、熟成させるのにとても時間がかかる品種で、その間に何度も会っているうちに距離が近くなっていきましたよね〜。

今井:新酒より味をのせたほうがより美味しいものなので、より熟成させようと時間をかけました。

西岡:待ってたあの時間すごくよかったよね!

はじめて作った酒米からできた奇跡のお酒

- ARUSHIROIが完成するまでのお話しを詳しく教えてください。 -

西岡:酒米を作り始めたのが2018年頃でした。

今井:西岡さんも酒米を作るのは初挑戦だったんです。

RARI:初めての酒米でこんなに美味しいお酒ができるのは奇跡だと思います。

- 一般的に日本酒をつくるには商品企画にはどれくらいかかるものなんでしょう。 -

酒造:一ヶ月で作って、ARUSHIROIに関しては2年熟成させました。若かったら3年かけたかもしれないけど、3年かけても出来なかったかもしれないんです。

RARI:どういうタイミングで"これでいこう!"ってなるの?

酒造:毎年8月に"初呑み切り"という酒造の行事があって、そのときに酒質のチェックをします。それでまだ早いよとなれば寝かして、というふうに。ARUSHIROIの場合は2年経って"これでいこう!"ってなりました。

女性が作る酒米がきっかけ

- 女性向けにつくろうと決めたきっかけはなんでしょうか。 -

今井: きっかけは、農業女子として活動してる西岡さんとの出会いです。西岡さんの農業、お米づくりへの向き合い方にとても信頼と共感をしました。その西岡さんが作る酒米で、ぜひ日本酒をつくりたい、と思ったことが始まりです。

西岡: 私は15代目なんです。今井さんと出会う前から、お酒好きなおじいちゃんに飲ませるお酒を作りたいとおもって、酒米をつくることにとても興味がありました。それが今井さんのおかげで、一気に形になって嬉しかったです。もちろん私もお酒好きなんですけどね!笑

今井: この地区(宇都宮酒造がある柳田地区)には、24年間くらい五百万石をつくっているっていう農家さんもいらっしゃるんですけどね。

西岡:わたしの地区(大田原市の花園地区)には、酒米を作っている人が誰もいないんです。やっぱり、食米の作り方とは全く違って、同じ作り方をしても食米は一等米になるけど、酒米だとそうもいかないんです。周りに酒米について詳しく知っている方がいないので、県の職員さんからアドバイスをもらったり、毎年試行錯誤しながら作っています。年に1回しか答え合わせが出来ないから時間掛かります〜。田んぼ選びも重要だから、今年は土の良い場所を選んだんです!

▲RARIさんが参考にされた本"神游の庭"

- ARUSHIROI -の由来

- 商品が完成するまでに大変だったエピソードってありますか。 -

RARI:名前を付けるときかしら。中々決まらなくて、いいなぁって思ったのが商標とられていたりとか。そんな中、2019年にわたしが京都の下鴨神社に行ったときに出会った本があって。その本に出てくる言葉の響きが良くて、そこから引用して使わせていただいたの。

▲"神游の庭"P63

アルシロイ 月神ノ応化也

RARI:みんなで「これにしよう!」って決めて、下鴨神社に問い合わせてお願いしました。メールしたり電話もしたりして、無事承認を得られたの。あとね、下鴨神社ってお酒に縁がある神社みたいなの。

RARI:デザインは1パターンだけ作って、皆一目惚れしてくれてすぐ決まったのよ。普段から植物とか書いているんだけど、蝶々を入れたの。蝶々って神聖な生きもので、神様の使いって言われているから、神聖だし縁起も良いでしょ。

今井:女性向けでこのパッケージだと、甘い発泡系って思われるけど、中身は原酒で辛口、しっかりしているんです。西岡さんのお米が原点なので、そこだけはぶらしたくなかったんです。パッケージに関しては、男性も"キレイですね〜"って買ってくれるんですよ。

西岡:この間わたしの知人の男性も「これおしゃれだね!飲んでみようかな」ってジャケ買いしてくれたー!

女性向けなら吟醸より純米吟醸の方がキレイ!

今井:酵母選びとか磨きとか大変だったけど、こんなに素敵な商品になって本当に嬉しいんです。実は、西岡さんのお米でお酒を作りたいって酒造である主人に話したら"じゃぁ、自分でやってみなよ!"と言われて、今までやったことないんですが、挑戦したんです。味がわかるまで、毎日眠れないくらい緊張してました。もう当分やりたくない。笑

今井:酵母や磨きを考えるのに1年くらいかかりました。大吟醸だと磨きすぎだし、女性向けなら吟醸より純米吟醸の方がキレイかなって。できあがった後も、どういうアルコールの%にするかも大事で、それは皆で比べてやってみたんです。

西岡:15・16・17%が送られてきて女性なら度数低いのが良いかな〜っとも思ったけど、17%が1番おいしく感じたの!

今井:西岡さん、お酒弱いってウソでしょ?笑

▲"初呑み切り"で実際に使用するぐい呑み

お酒も田んぼも水が命

RARI:宇都宮酒造さんがお酒のために使っている井戸水がおいしいんですよ。

西岡:水がいいから、やっぱり日本酒も水が命なんだなって思った。

今井:酒蔵の中には、いいお水を求めて蔵の位置をかえるところもあるくらい、お酒作りにお水は大事なんです。この辺は、鬼怒川が流れているからそれでおいしいんです。

西岡:お水は、山が大事ですよね〜!山から下りてくる水が大切!!

▲2021 グルメ&ダイニングスタイル ショー準大賞受賞のトロフィー

國酒だから、伝えていかなくちゃって。

- 最後に、ARUSHIROIや他に野望とかってありますか。 -

今井:ARUSHIROIをメインにした女性の会をやりたいんです。ほかの女性が作っているもの、RARIさんや西岡さんの商品と組み合わせてセット販売のようなこともしたいんです。今どれが素敵かなってみんなでワイワイ考えています。例えば、西岡さんの正月飾りと日本酒をセットにするとか!定期便も考えています。日本酒って國酒なのに、飲む人がどんどん減ってしまっているから。女性っておいしいものやキレイなものが好きじゃないですか。だからARUSHIROIのように、沢山の方に興味をもってもらって、気軽に手にとってもらうのが今1番大切にしていることなんです。

▲2022 ミラノ酒チャレンジ受賞の賞状

それぞれの夢が叶った

- いくつくらい賞をとられたんですか。 -

今井:ARUSHIROIに関しては、沢山受賞を頂いて、ミラノの賞では"味"・"デザイン"・"ペアリング"3つの軸で賞をもらったんです。あとは、発売前の展示会はグルメ&ダイニングショー秋2021新製品コンテスト(ビバレッジ部門)でデザイン賞を頂いて、だから自信を持って多くの人に勧めていきたいです。

RARI:西岡さんの酒米を作ろうという夢、そしてその酒米を今井さんが知って是非お酒にしたいという夢。わたしもいつかお酒のラベルをデザインしたいと思っていたこと。日本酒のラベルデザイン、それも地元のお酒、友人の酒米、そんなことは中々ないことだと思います。そして自分たちの自己満足だけでなく、多くの人に喜んでいただけて、さらに色々な場所で評価をいただけたこと。とても嬉しいことです。わたしたちのそれぞれの夢が叶いました。


今回の対談について

JARDIN BLANC主宰
クリエイター RARI YOSHIO


宇都宮酒造 株式会社
管理栄養士 今井亜紀


momo farm 四季と育むお米
米農家 西岡 智子


歴史のある佇まい

今回3人の対談をするにあたって、宇都宮酒造さんの素敵な酒蔵にお邪魔してきました。

杉玉は新酒が完成した合図

日常では中々お目にかかれない「杉玉」。これは、その名の通りスギの穂先を集めてボール状にしたもの。なぜ、酒蔵にこれが吊されているか。それは、新酒が完成したことを知らせるため、すなわち「搾りを始めました〜」というアピールとのこと。最初は緑色から、時間が経つと茶色に変わっていきますが、これは、その新酒の熟成具合を、道行く人に伝える目印になるとか。